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前回はブラックミュージックというか、HIPHOPの地域性をアーティストを交えながら簡単に説明したわけだが、今回はその地域性の壁をそこまで感じさせなくなった最近のHIPHOPなどのブラックミュージックの様子を語りたいと思う。
まずは背景から。特に地域性で対立構造を見せていたのが【東(Bad Boy Record=バッドボーイ)と西(Death Low Record=デスロウ)】である。中でも有名な敵対関係は【東のNotorious B.I.G.(通称ビギー)】と【西の2Pac(トゥーパック)】で、西海岸の勢力が強かったHIPHOP業界にビギーの出現により東が台頭し、2人は共にHIPHOP業界を盛り上げるべく手を取り合っていたが、2Pacが銃撃(1994年11月)されたことでビギーを疑ったことから仲が悪くなり、結末として、2Pacがまず凶弾に倒れ(1996年9月)、その後ビギーも凶弾に倒れることとなった(1997年3月)。この事件は現在でも未解決事件である。
このように、アメリカは銃社会でもあることから、ラップで相手を罵る【ビーフ】から実際に武力で対抗するほど、地域やアーティストで対立することが多い。そこで、今でもアーティスト同士でのビーフはあるものの、【地域】で対立するということがなくなったような気がする。この理由として、【プロデューサー】の存在感がシーンで重要視されるようになったことが大きいと考えられる。
【#001ブラックミュージックの地域性】
でも記述した通り、プロデューサーは曲を作るアーティストであり、日本で言うところのつんく氏や小室氏である。このプロデューサーが日本で言うところの【作詞・作曲】と呼ばれてCDの裏面の隅っこに記載されるのではなく、実際に曲中で登場したり、プロモーションビデオ(PV)でもアーティストの隣で2番目に目立っている。ということもあり、そのプロデューサーが作った曲だから買う、といったカルチャーさえアメリカでは根付いている。
プロデューサーの存在の台頭が顕著であった例として、The Neptunes(ザ・ネプチューンズ)が挙げられる。Pharrell(ファレル)とChad(チャド)の2人組で結成されたネプチューンズは、電子音をフューチャーしたトラックメイキングで一時代を築いた。東西南北を問わず、売れっ子プロデューサーであるネプチューンズのトラックで曲を作りたいとアーティストが殺到し、トラックを競売にかけ、落札したアーティストが使用するといった人気ぶりであった。
その電子音トラックのブームが過ぎ、ようやくHIPHOPらしい、【サンプリング】の季節がやってきた。HIPHOPの原点復帰とも言えるこの状況は、 プロデューサー台頭時代に更に拍車をかけた。今では日本で一番有名なHIPHOPのアーティストかもしれない、【Kanye West(カニエ・ウェスト)】はご存知だろうか? 彼はレコーディングの帰宅途中に居眠り運転で事故に合うまで、そこまで有名ではないプロデューサーだった。実はPとしての歴史はなかなかに長く、 1996年にGravというラッパーのアルバムでプロデュース曲が発表され、その後にMaseやLil’ Kimといった有名アーティストと組むものの、なかなか売れなかった。 そんな中HIPHOP界のKingことJay-Zに認められ、2001年にロカフェラレコードと契約をする。そして、ようやく陽の目を見る作品を世に送り出したのである。 それがJay-Zの【The Blueprint】の中でも一際目立つ【Izzo】である。Jackson Fiveの名曲【I want you back】を小節ごとに切り分け、再度つなぎ合わせて曲にし、 キングJay-Zがラップをのせた。これがサンプリングの醍醐味であり、サンプリング時代の到来の予兆でもあった。
その後2002年に前述した事故に合い、 彼は一気にスターダムに上り詰める。自身のアルバムを発表し、先行シングルの【Through the wire】で自身の事故で死の淵から生き返った内容をChaka Khanの 【Through the fire】を45回転にすることで新たな曲に変え、自らのラップを披露した。口の中にワイアーを通すほどの大きな事故であった。 ここで、通常レコードは33回転という回転スピードでターンテーブルが回るのだが、これを敢えて45回転にさせることで、昔ながらのゆったりとした曲も、 HIPHOPに適した速さとなり、さらにはもともと入っている原曲の声が異常に高く聴こえ、原型を留めず、新たな曲として理解できる、そんなテクニックを使ったのである。 この才能豊かで有望なプロデューサーに曲を作ってもらいたいという依頼は瞬く間に全米に拡がり、各地の著名アーティスト Jay-Z(ジェイジー)、Nas(ナス)、Alicia Keys(アリシア・キース)【以上イースト】、Trina(トリナ)、T.I.(ティーアイ)、Ludacris(ルダクリス)【以上サウス】、The Game(ザ・ゲーム)、213(トゥーワンスリー)【以上ウェッサイ】、Lupe Fiasco(ルーペ・フィアスコ)、Twista(ツイスタ)【以上ノースというかシカゴ】、 そして、あの皆さんご存知のMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)からエイプで有名なTeriyaki Boyz(テリヤキボーイズ)【日本】まで本当に幅広く曲を提供しており、 書いても書いても書ききれない、、、。
そして、現在カニエ・ウエストのように、また多くのプロデューサーが全米を股に掛けて活躍している。Swizz Beatz(スウィズ・ビーツ)、Just Blaze(ジャスト・ブレイズ)、Lil’ Jon(リル・ジョン)、Jermaine Dupri(ジャーメン・デュプリ)、Timbaland(ティンバランド)、Polow Da Don(ポロウ・ダ・ドン)、Cool&Dre(クール・アンド・ドレ−)、Mr. Collipark(ミスター・コリパーク)、Will I am(ウィル・アイ・アム)、Dream(ドリーム)、DJ Premier(ディージェー・プレミア)と売れっ子プロデューサーの一端だけでもキリがなくなりそうで、独断と偏見で名前を挙げさせてもらった。(上記画像が前述のプロデューサー達である。)
それぞれのプロデューサーにはもちろん出身地や有名になったグループがあるため、それぞれの地域での活動はやはり根強くはあるが、基本的には【曲調】や【サンプリング手法】、【音質】でそれぞれを判断でき、そのそれぞれのプロデューサーの色濃さを残しながら、各地のアーティストと良い曲を作り続けており、これからもその関係は変わらないだろう。
駆け足ではあったが、もはやただの【作曲家】ではなく、それぞれの存在がひとつのブランドになっているプロデューサーの存在にも目を配ってHIPHOP、R&Bないしはブラックミュージックを聴くことは面白い一面であることはわかっていただけたのではないだろうか。また細かくは今後追って説明していくが、前回の【#001ブラックミュージックの地域性】に引き続き、今回の記事でHIPHOPを聴く上での下地が身についたはずである。次回はその上で、どうHIPHOPを聴いていくとより深いかをお話したいと思います。
text: DJ JEWELZ
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